ゴルファーのハートをくすぐる「お得感」の重要性

数字で計れない「お得感」の演出

   ゴルフが大好きな私は、コースそのものに戦略性があり、それなりの整備さえされていれば、個人的にはクラブハウスなどプレハブづくりで十分だと思っています。レストランもいらないし、ましてやお風呂など全く必要ないと思っています。しかし、こと商売ベースとなれば話しは若干違ってくるのです。
   徹底した合理化という点から、ゴルフ場の運営を「一人でやったらどうなるか?」と、私は常々考えています。
  駐車場の入り口に椅子をひとつ置いて、プレーヤーから現金を受け取り、あとは「ご自由に行ってらっしゃい!」で全て終了。トイレに行きたくなれば、「プレーフィは各自箱へお入れください」といった掲示を出して無人に。電話を受ける暇があれば、予約も受け付けますが、原則的には到着順。もちろん、食事は各自が持ち込むというスタイルのゴルフ場です。どうです、コースさえ良ければプレーヤーの立場から見ても理想的なゴルフ場だとは思いませんか?
  しかし、実際にはコース管理費などの経費や固定資産税などの保有コストも必要になり、ゴルフ場を存続、そして維持するには付加価値をつけて料金を底上げし、ある程度の収入を確保しなければ成り立ちません。前述の一人で運営できるゴルフ場は非常に合理的かもしれませんが、付加価値がつけづらいのでゴルファーからは「安くて当たり前」というレッテルが貼られてしまい、料金の底上げができなくなります。他コースの料金が下がり過当競争になっている現状では低料金によるアドバンデージが取りづらく、特に価格差が付きづらい平日の集客に苦労することは目に見えています。そこで重要になるのが価格に対する価値、つまり「お得感」の演出というわけです。
  メッチャの料金設定の際には周辺コースの相場感をもちろん分析しましたが、その数字は特に参考にはせず、メッチャの収支上から導かれる運営可能な料金としました。その結果、メッチャのプレーフィは平日10,000円、土曜日16,000円、日曜祝日15,000円。1、2、8月のシーズンオフには各2,000円の割引となっています。この金額は周辺コースのどこよりも安いものであったので、予想通りオープン時には大きなインパクトを与えることができました(今となっては、決して安くありませんが…)。
  但し、冒頭で述べたように、非常に便利なアクセスや決して見劣りしないハードなどから、「いくら何でも安すぎるのでは?」「もう少し高くても良いのでは?」といった意見があったのも事実です。しかし、周辺コースも黙って見ているはずはなく、当然ながらメッチャを意識した価格設定するにすることは目に見えています。事実、最近は金額だけ見れば同じような、いやそれより安い価格を打ち出しているコースもいくつか見受けられるようになりました。そこで再び「お得感」の話しです。
  オープン当初、メッチャに初めて来場したゴルファーからこんな声をよく聞きました。「あれ、ちゃんとしたクラブハウスがあるんだ」「なんだ、お風呂やレストランもあるぞ」「パブリックコースにしては立派だな」…。
  それまでの周辺価格の常識から外れていたメッチャのプレー料金を見て、「クラブハウスなど、きっとあるはずない」「どうせプレハブ程度のクラブハウスで、お風呂もレストランもない」。そう、ゴルファーが勝手に思い込んでいたのです。もちろん、メッチャにはお洒落なクラブハウスはもちろん、お風呂やレストラン、コンペルームもあるわけですから、それだけでお客様は得した気分になって当然。実際の価格以上、数字以上に割安感を与えることによって「お得感」が際立ち、ゴルファーのハートを確実にキャッチすることができました。
  また、メッチャの料金は消費税や利用税が含まれた俗にいう「ポッキリ料金」。リーフレットやコースガイドに出ている金額以外に、一切必要ない料金システムになっています。見せかけの低料金を打ち出し、実際の精算時には税金などを別途請求する。こうしたゴルフ場の姿勢に対して、ゴルファーが不信感を抱いている現状での「ポッキリ料金」も、低料金を際立たせて「お得感」を演出できる大きな要素です。
  これらの税金部分はあくまでも預り金のため、ゴルフ場にとってもそうそう簡単に減額できるものでないことは十分承知の上。案の定、同じような価格のゴルフ場が出現して数字の上では競合コースが現れた現在でも、この税金分の「お得感」は依然として大きな効果を発揮しているようです。
  この他にも、シーズンを通してクオリティの高いベントの1グリーンや、当たり前といえば当たり前なのですが人工芝が一切ないティグラウンド。見るからにお金が掛かっていると思われるカートナビゲーションシステムをはじめとした最新マシーンなど、「お得感」の演出が数多くおこなわれています。
もちろん、こうした「お得感」を演出する一方で、密かに、それでいて徹底的に経費を削減していることはいうまでもありません。たとえば、洗面所は布タオルでなくてペーパータオルであったり、浴室に剃刀が置いてなかったり、ロッカーは個別に靴べらをセッティングしなかったり…。プレー自体に何ら影響がなく、ゴルファーが実はあまり気にしていないような過剰サービスは極力廃止する。この微妙なバランス感覚こそが、実はメッチャの魅力の大きな秘密となっているのです。

パブリックの大原則は「平等」

  低料金の価格設定をするにあたり、最後までこだわった点があります。それは、メッチャがパブリックコースであることです。そもそも、メンバーという特別な存在となるゴルファーがいないパブリックコースの本質は、「誰もが平等にプレーできる」ということ。料金格差はコースのグレードによって様々ですが、お客様に対しての待遇に格差を設けない。だからこそ、広く門戸を開けた「パブリックコース」を名乗ることができるのだと考えています。
  ゴルフ場は現在、集客力の減少から定価よりも安い割引価格を設定することが当たり前のようになっています。中には、定価など既に存在せず、その時々に合わせた実体のない割引価格が定価になっているゴルフ場も少なくありません。一方で、こうした現状がゴルファーのゴルフ場に対する不信感を煽り、それが原因でゴルフ場離れが起きている現実もあります。
  同じゴルフ場で、同じ日に、同じようにプレーしたにも関わらず、一人は15,000円を支払い、一人は10,000円しか支払わない。それを同じカウンターで精算するという不条理さをゴルファーに感じさせてはいけない。少なくとも、誰もが気軽に、そして気楽にプレーできることが大前提のパブリックコースがそんなことをしてはいけないのではないか? そんな発想から、メッチャではシーズンオフに一律で値下げする以外、一般のお客様に対して一切の割引料金を設定していません。その代わり、誰もが平等に「お得感」のある割安なプレー料金でゴルフを楽しめるよう、実体のある思い切った価格の設定をおこなっています。
  ゴルフ雑誌などでコースを紹介してもらう際に、読者限定の割引料金を設定しなければならない時もありますが、そんな時にはゴルフキャップやボールのプレゼントで代用し、あくまでも料金に関しての割引はご了承していただいています。「それでも…」というときには一気に無料招待プレーにしてしまうという徹底ぶり。ここまでやってはじめて料金の一本化による合理性とマシーンを使った自動チェックインによる省力化が生きてくるというわけです。
  思い切った低価格は、ゴルフ場利用税にも影響しています。前述のように、メッチャは利用税や消費税など全てを含んだ価格設定をしていますので、一時的な預り金という安易な発想ではありません。この利用税を安く設定できればできるほど、それが直接的な収入に結びつくわけですから、その税額は大問題です。たとえば、利用税を粘り強い交渉により100円安くできれば、それだけで単純に400万円以上の収入が増える計算になります。ご存知のように、利用税額はゴルフ場の施設規模やプレー料金によって決定されます。特に、定価のプレー料金が算定基準に大きく影響している現実からも、定価ベースでの低料金化は必須条件であったのです。
  この他にもメッチャの料金に対するこだわりとして、すべてその場で現金精算という点が挙げられます。フロント、レストラン、売店。この現金払いというのは、その都度といった意味だけではなく、カードが使用できないという文字通りの現金払いを意味しています。
  カード利用者がいなければ、カード手数料をカード会社に支払う必要はありません。無駄な支出といえば、ある意味でこのカード手数料ほど無駄なものはないでしょう。また、機械に通したり、サインをしたりと、カード故の精算業務の煩雑さもあります。しかし、メッチャがカード利用を認めていないのは、それだけではありません。
  カードが使用できないことにより、お客様に多少の不便さを感じさせているのは事実かも知れません。しかし、それよりも「誰もが気軽に、気楽にプレーできるパブリックコース」ということで、あくまでも各自のポケットマネーでプレーして欲しいという主旨を理解して欲しかったのです。実際、現金がないといったクレームは、1年以上営業していて1件もありません。いや、本当はあったのかも知れませんが、友達に借りるなりしてお客様自身で解決してくれているようです。
  仕事絡みの接待ゴルフやお義理のゴルフではなく、本当に気の合った仲間同士だけでゴルフを楽しむ。そんなメッチャの掲げるポリシーが、こんな細かなところでも具現化されているのです。
  料金はあくまでもわかりやすく。だからメッチャでは、1月2日であろうと平日である以上は当然のことですが平日料金のまま。それがゴルフ場の誠意であると考えます。





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