アクセスが良くて料金が安ければ、そこそこのお客様は集めることができる。しかも、新設コースは物珍しさもあって更に集客効果が高い。しかし、あまりにもゴルフ場が増え続け供給過剰になった現在にあって、現実はそんな甘いものではありません。
多いときは1日に60組以上詰め込んで、少ないときには収支を無視した割引料金を設定すれる。確かに、そんなやり方をすれば入場者総数はある程度の数字を残すでしょう。しかし、そんなゴルフ場に自分たちが行ったときのことを想像してみて下さい。「ホール毎に待ち時間あり」「お昼休みは2時間近くあって最悪」「安いから来ただけで高くなったら絶対行かない」。そう思うに決まっています。「どうされたら嬉しいか?」「どうされたら嫌なのか?」を、お客様の立場になって考える。メッチャでは「お客様本位」という言葉をベースに、徹底的に商品の作り込みをおこないました。そしてそのベースとなっているのが、仮オープン以来頻繁におこなわれている来場者に対するアンケート調査です。
このアンケートも、当初の調査ではメッチャが実践しようとしている運営施策に対するものが中心でしたが、最近は個人のゴルフライフにまで及ぶ詳細なものに発展。2,000以上も集まったこれらのアンケート結果は、昨今のゴルファーが「何を考えているのか?」「何を求めているのか?」を知る上で非常に貴重な財産となっています。
こうしたアンケート結果が大きな後ろ盾となり、今やすっかりメッチャの「売り」になっているのが18ホールを昼休みの休憩を取ることなく、一気にラウンドしてしまうスループレーのラウンドスタイルです。
以前から「セルフプレー」「スループレー」「乗用カート(フェアウェイの乗り入れ)」が、新しいゴルフ需要を喚起する三本柱だと考えていたのですが、なかなか関東や関西のゴルフ場では実践する機会に恵まれませんでした。スループレーにすれば早いスタートは午前中にプレーが終わり、午後はゴルフ以外の用事に時間を割くことができます。遅いスタートなら前の晩に夜更かししても大丈夫だし、お昼ご飯を食べてからゆっくりゴルフが楽しめるなど、今までにない新しいゴルフライフを提案することが可能です。メッチャから大阪への帰り道となる中国自動車道の宝塚付近は渋滞することで有名なので、中途半端な時間に帰るぐらいなら極端に早いスタートや極端に遅いスタートでも需要があるのではないか? 何より、ゴルフは18ホールを通してプレーするのが本質で、スポーツの最中にご飯を食べるような日本だけが異常な世界。そんな思いも重なり、メッチャでは最初からスループレーの採用に踏み切ったのです。
仮オープン当初のアンケートでは、スループレーに対して「良い40%」「どちらでも良い30%」「休憩が欲しい30%」といった程度の賛同率しかなく、「今まで通り昼食休憩を取らせても良いのでは?」といった意見があったことも事実です。しかし、徹底してスループレーに特化した結果、その良さを次第にゴルファーも認めてくれるようになり、最近では「良い90%以上」という高い支持を得るまで浸透し、逆に「スループレーでなければ行かない」といった声が圧倒的大多数になっています。
確かに、ラウンドスルーにすることによって、入場者のキャパシティは大幅に減少してしまいます。日照時間が長い季節は朝の7時から午後の1時までアウトコースから一方通行でスタートし約50組のキャパシティがあるのですが、日照時間が短い冬季はアウトとインから同時スタートして途中でターンするために約34組程度しか予約をとることができません。もし、それ以上予約を取ってしまうとハーフ終了した時点でスタートが完了しておらず、結局は休憩時間を設けることになってしまうのです。
スループレーにするとレストランの喫食率は大幅に減少します。実際、当初の客単価は僅か1,000円程度しかありませんでした。
そもそも、従来型のレストランに疑問を感じているゴルファーは多く、ゴルフ雑誌のアンケートをみても、レストランに対する不満が圧倒的に多くなっているのが現状です。閉鎖的な中でおこなう押し売り商法。それがゴルフ場のレストランというわけです。
メッチャでも当初は「レストラン不要」の声があったのですが、前述のように「お得感」を演出するためには必要不可欠と考え、敢えてその存在は残しました。但し、あくまでもゴルフ場はプレーフィ収入が本筋ですので、レストランからの収入(外注化しているので委託料収入)は二次的なものと考え、当初からあまり期待はしていませんでした。もっとも、客単価が1,000円程度のままではレストラン業者にとっても死活問題です。
レストランのメニューに割高感があり、ラウンドスルーにも慣れていなかったオープン当初、数多くのゴルファーが食べ物や飲み物を「持ち込み」、また、プレーが終了するとすぐにゴルフ場を後にしていました。そこで、コース内の自動販売機(茶店は無人で自販機対応)をすべて定価販売とし、レストランのメニューも「セットもの」をやめ、シンプルでリーズナブルなものとしたのです。
コースの手前のコンビニで120円のものが、ゴルフ場に入った途端に200円。それで買ってもらおうと思う方が間違いで、正常な金銭感覚があれば「持ち込む」のが当然です。但し、同じ料金ならわざわざコンビニに立ち寄らなくてもすみ、常に冷えているゴルフ場の自販機を選んでくれるはず。みすみすコンビニの売上げを伸ばすくらいなら、定価でもよいからゴルフ場でお金を落としてもらう。レストランも同じで、お腹が空けばゴルファーはどこかで食事をするのです。それならば市中のレストランではなく、ゴルフ場のレストランを選んでもらえるように努力をする。このような発想を基に魅力的なメニューを増やし、価格もセット故に高くなるような設定は止めました。ちなみにレストラン「クッチャ」でお出ししている昼食の中心価格帯は700円から1,000円程度。スループレーに馴染んだゴルファーがレストランの利用方法にも慣れ、また、レストラン自体の営業努力の甲斐もあり、今では客単価が2,000円程度までアップしています。
入場者のキャパシティが減り、レストランの売り上げも減少する。では、何故そうまでしてスループレーを採用したのでしょうか?
確かに、スループレーの利点はいくつもあります。1番ホールから一方通行でスタートする時は早い時間にインコース、遅い時間はアウトコースといった具合にコースを集中管理できるし、両方からスタートさせる冬季は驚くほど早くプレーが終了し、スタッフの労働時間に余裕が生まれます。但し、それはあくまでもゴルフ場サイドの都合によるものなので、声を大にしていうことではありません。
どうしてスループレーにこだわったのか? その答えはただひとつ、メッチャがゴルファーから「オンリーワン」と呼ばれるようなゴルフ場をめざしたからに他ありません。
俗にいう「フルバック」を含め、使用するティを自由に選択できる。2サムでもラウンドできる。ドレスコードは特に設定していない。メッチャで取り入れているこうしたアイデアも、今や特別に珍しいものではありません。但し、少なくても関西エリアでスループレーに限定しているコースは皆無です。その先進性が際立つことは間違いありませんでした。
もちろん、「スループレーが嫌だ」「昼ご飯を食べたい」というゴルファーが数多いことも事実です。しかし、「だからメッチャに行く」というゴルファーが年間のべ4万回だけプレーしていただければそれで良いわけで、そのためには他のゴルフ場にはない「差別化」、つまり「オンリーワン」のアイテムが必要不可欠だったのです。
最近は近隣でもスループレーを取り入れるコースが現れているので新たな「差別化」を打ち出す準備をしていますが、少なくともゴルファーの好意的な反応を見ている限り、スループレーへの流れは確実に加速度を増している。そう確信している毎日です。
割引価格を設定しないメッチャはまた、営業マンによる外回りの営業を一切おこなっていないのも大きな特徴です。
確かに、告知方法に制限のあるメンバーコースであれば、それは非常に効果的な集客方法かも知れません。しかし、メッチャはあくまでもパブリックコース。クローズド営業では、「パブリック」の良さの大半がスポイルされてしまいます。また、営業マンによる個別営業だからこそ生まれる弊害も気になります。
外回りの営業でお客様に個別にお会いした場合、最近の傾向として「割引交渉」は避けられません。しかし、メッチャは前述のように割引料金は一切設定しない方針。また、予約チャンスの拡大からコンペを制限していることもあり、営業が文字通りの個別営業となってしまい非効率に成らざるを得ません。
「料金」で来るお客様は料金を安くしなければ来ない。「営業」で来るお客様は営業しなければ来ない。「人」で来るお客様はその人がいなければ来ない。この悪循環を打破するためにメッチャは、あくまでも運営の差別化によるゴルフ場自体の「商品力」で勝負する方法を選んだのです。
但し、その一方でゴルフ場の商品力を認知してもらうための宣伝・広告費、販売促進費は他コースではまず見ることのできない金額を投入。ちなみに初年度は、約5,000万円もの予算を割きました。
「まっすぐ、行け」。ドレスを着た女性がクラブを持って飛んでいる、およそゴルフ場の広告とは思えないポスターが大阪の中心街を走る地下鉄の構内に大量に掲示されました。メッチャのグランドオープンを告知する大型ポスターです。この他にも、キャンペーンガールが練習場を回りながらリーフレットを配布する「練習場キャラバン」、最近ではゴルフ場の案内やメッチャをモニター上でラウンドできるゲーム機能まで付いたCD-ROMを製作するなど、従来のゴルフ場の集客にはない広告・宣伝を展開。並行してプレス向けの詳細なリリースキットを製作し、ゴルフ雑誌などへも頻繁に取り上げてもらえる努力をしました。
後発のゴルフ場の認知度を高めるには、まずは徹底的に目立つことが大切で、そのためには過去の常識に捕らわれない奇抜な発想も時には必要です。メッチャの広告を担当したのは若者を対象にしたイベント開催なども手がける代理店。ゴルフ場という枠にはまらずに、あくまでも「ヒット商品」を作るという姿勢が「今どきのゴルファー」の共感を得る結果となりました。
また、目立つこと以外にも、広告・宣伝は誰に対して発信するのか? つまり、ターゲットの絞り込みが大切です。
パブリックコースという特性から女性や若者、そして初心者が多くなると予想され、メッチャでもそれを意識した販促グッズを製作して配布しています。たとえば、チェックイン方法やラウンド方法などメッチャでの1日の流れを説明した「メッチャの法則」、セルフプレーのラウンド方法やスロープレーの防止策などを説明した「快適セルフラウンド術」、CD-ROMにはコースに出るまでのガイド「ゴルフデビューブック」が付録に付いています。また、その一方で、コース内の様子が詳細に記されているプロユースの「ヤーデージブック」の製作、新人のプロゴルファーを集めたトーナメント「プリセプトツアー」の開催など、上級者に対するケアも忘れずにおこなうようにして、バランス感覚を保っています。
集客が好調な現在、「広告・宣伝などの販促に多額の費用を掛ける必要性があるのか?」といった疑問があるかも知れません。しかし、一度落ちた集客力を取り戻すには、今まで以上のコストが必要とされるのが販促費。何より、メッチャの場合は直接的な集客だけではなく、「ゴルフ場のコンセプト」「メッチャならではの差別化」を広く伝えることが広告・宣伝の大きなウェイトを占めているだけに、この戦術の手を緩めることはありません。
練習場キャラバンに行った際にも、メッチャの知名度が思った以上に浸透していないことを思い知らされます。ガッカリすることが多いのですが、その反面「まだまだ新しい顧客を開拓する余地が残されているのだ」と、内心嬉しい気分で一杯です。
パブリックコースの良さを最大限に生かすという発想から友の会的な組織がないメッチャですが、唯一リピーターには「メッチャカード」を発行し、顧客の囲い込みをおこなっています。但し、これはあくまでも会員組織ではなく、また、誰に対して発行するものでもありません。「ハーフのラウンド時間が2時間30分以内」「ゴルフ場のコンセプトを理解する」などメッチャの運営方針を十分にわかってもらったゴルファーに対して、しかもゴルファーが申込書に必要事項を記入した場合にだけ無料で配布しているのです。
何度もいうようですが、割引料金を設定していないメッチャでは、このカードを持っているからといってプレーフィが安くなることはありません。また、早い時期から予約が取れるといった先行予約権があるわけでもありません。にもかかわらず、既に1,500人を越えるゴルファーがメッチャカードを保持しています。それは何故なのか?
メッチャカードの人気の秘密は第一に、チェックイン時の省力化が挙げられます。一般ゴルファーは自動チェックイン機で支払いした後に氏名と住所をわざわざ記帳しなければなりませんが、事前登録されているカード保持者はその必要がなく、面倒な手間が一切省かれます。これはゴルファーにとってはもちろんですが、ゴルフ場サイドにとっても非常に便利なシステムといえるでしょう。しかし、メッチャカードの最大のメリットは、インターネットによる予約受付。これに尽きるといっても過言ではありません。
メッチャのホームページには1ヶ月で約50万件ものヒット(クリック)数があります。あくまでもヒット数の合計なので50万人が見ているというわけではありませんが、それにしても桁外れのアクセス数であることには変わりがありません。ちなみにアンケート結果を見ると、メッチャ来場者のパソコン保有率とインターネットの利用率は、全国平均よりもかなり高い数字になっています。
よく、「何でそんなにヒット数があるのですか?」と聞かれることがありますが、その答えは簡単です。ホームページに詳しい担当者が、ホームページを頻繁に見るゴルファーを満足させるホームページを製作しているから。それが全てです。
ホームページは取り敢えず立ち上げたからといって、簡単に見てくれるものではありません。あくまでもインターネットが好きな、ある意味でディープなファン層を満足させるようなホームページでなければ見向きもされない特殊な世界です。そのためにはマニアックなページの作り込みは必要不可欠。リーフレットをそのまま掲載している程度のコース案内では全く不十分で、それでは今後もヒット数が伸びることはないでしょう。
メッチャのホームページはゴルフ場の詳細な説明はもちろん、頻繁に更新されるコース状況や無料プレー券が当たる懸賞など最新の情報が満載ですが、その中で最も注目されているのがスタートの空き情報。3ヶ月前までの予約状況がひと目でわかるばかりでなく、実際に予約も可能なのですが、実はこの予約がメッチャカードを所有しアクセス番号が与えられたゴルファーでなければできないシステムになっているのです。
メッチャは現在、3ヶ月前の同日朝10時から予約を受け付けています。しかし、シーズンの週末には受付開始後僅か数分で予約が埋まってしまうことも珍しくありません。しかし、この電話予約枠の他に24時間受付可能なインターネット専用のスタート枠もあるため、カード保有者はホームページから予約を取ることが可能なのです。この予約状況には急なキャンセルによって生まれたスタート枠も掲示されるため、熱心なメッチャファンほどアクセス回数も増える仕組みになっています。こうしたシステムが月間50万ヒットというとてつもない数字を生むと同時に、直前の予約も拾い上げコンスタントに入場者を確保する秘密にもなっているというわけです。
ゴルフ雑誌や業界誌に頻繁に取り上げていただいたメッチャへは現在、視察のためにゴルフ場関係者が数多く訪れます。名乗られた関係者だけでも100コース近く、お忍びの方を含めれば200コース以上のゴルフ場関係者がメッチャに来られたのではないかと予想しています。
最新式のオペレーションマシーンは、お金を払えば誰でも買えます。ラウンドスルーなどの運営方法も、腹を決めれば導入することは可能です。しかし、他のコースが簡単に真似のできないことがあります。それはメッチャのスタッフワーク。彼ら、彼女らの頑張りなくしては、今日のようなオペレーションが決して成り立つことはありません。
メッチャは年輩のゼネラルマネージャー以外、20才から30才代を中心とした若いスタッフで構成されています。最近では「シルバー層の活用」という発想から高齢のスタッフを雇い入れるゴルフ場が増えてきていますが、あくまでもゴルフ場を「スポーツ施設」と位置づけているメッチャでは、若くて明るく元気のあるスタッフによるオペレーションをめざしました。そのために制服はユニクロで揃え、胸には各自の名前がしっかりとわかる大きなスタッフバッジを下げています。こうしたファッションがスポーツ施設としての親近感を生むようで、ゴルファーからも非常に好評です。
また、徹底した合理化で他のゴルフ場よりスタッフが少ないため、お客様との接点も少なくなりがちですが、だからこそゴルファーとのコミュニケーションを大切にしようと賢明に努力しています。スタート前のカートやコースの説明、頻繁に出かけるコースの巡回、そしてブラインドホールでのフォアキャディ。スロープレーのゴルファーに対してはキャディの役割までもしながらお客様との会話を大切にする。こうした細かなケアもあり、最近では「どのゴルフ場よりもスタッフと喋った気がする」といって下さる声も多く、メッチャの大きな特徴となっています。
よく、「どうしてメッチャはそんなに人気があるのですか?」と訊ねられるのですが、そんなときは必ず「フロントの女の子が可愛いから」と冗談半分に答えます。しかし、これはある意味で真理でもあります。ロッカーキーの渡し方、カートの配置方法、スロープレーの防止策…。それらの全ては、常に「お客様の生の声」を身近で聞いている彼ら、彼女たちの創意工夫によっておこなわれ、問題点は素早く解決する。ゴルフ場など運営施設の成否は結局のところ現地スタッフ、最前線にいるスタッフの「器量」が大きなウェイトを占める。それが「客商売」の変わらない鉄則なのです。
これから日照時間が長くなれば、初心者を対象にした「ファースト・ティアップ・プログラム」を実施します。これは1ラウンドする最終スタート組が出た後に、初心者を対象としてハーフだけのスタート枠を設定するというもの。一般のスタート間隔が7分であるのに対して、このスタート枠は10分間隔。一般枠ではスロープレーに対して厳しく対応しているだけに、せめてこのスタート枠では気兼ねなくラウンドしてもらおうという主旨のアイデアです。
新しいゴルフ需要の喚起。気軽に、そして気楽に楽しめるメッチャの存在意義は、そこに集約されています。前述の「ファースト・ティアップ・プログラム」は、その最たるものといえるでしょう。アンケート結果を見てもメッチャでプレーした回数分に比例するように年間のラウンド数も増えているゴルファーが多くなっています。ゴルファーの立場に立ってゴルフ場の敷居をもっと下げれば、ゴルファーは確実にゴルフ場へ足を運んでくれる。まだまだ未熟で発展途上のメッチャかも知れませんが、それが実証されたことだけは確かです。
運営コンセプト、そしてそれを実現する事細かな施策。しかし、メッチャが大成功を納めている最大の理由はその根幹を成す経営スキームにあることはあまり知られていません。ゴルフ場を所有する資産会社と実際にオペレーションをおこなう運営会社の分離。この経営スキームがあったからこそメッチャの今日の繁栄があるといっても過言ではないのです。
日本のゴルフ場の大部分は資産会社と運営会社が同じです。中には便宜上分けているケースもあるようですが、実態は資産を持つ経営会社と実際にゴルフ場を運営する運営会社が表裏一体となっているケースも珍しくはありません。
日本のゴルフ場の多くは、オーナーすなわち資産会社の代表者の趣味性が色濃く反映されたものとなっており、「経営」といった概念からは大きく逸脱しているのが現状です。「ステイタス」「グレード」といった亡霊に取り憑かれ、もっとも大切なゴルファーニーズを蔑ろにして収支を悪化させる。その結果が、現在のゴルフ場を取り巻く最悪の状態を生み出した最大の要因であることは間違いありません。
一見平穏そうなゴルフ場にも、表面には出ない数多くの問題点が隠されています。巨額の開発費、複雑な許認可、地権者など地元との関係も蔑ろにすることはできず、それらが健全なゴルフ場運営の邪魔をすることも少なくないのです。そこで、こうしたゴルフ場の「負」の部分が運営の足枷にならないように、資産会社と運営会社を分離するスキームづくりが重要となるのです。
資産会社はあくまでもゴルフ場の資産を保有する会社で、固定資産税や地代賃料などの保有コストだけを負担する一方、運営会社に対する防波堤の役目を担います。また、運営会社は経営上の制約を受けることなく、あくまでも収益性を追求したオペレーションの実現をめざし、資産会社に対しては保有コストの確保、そして対外的な評価が高まることによる資産価値の向上をもって応えます。
実はこの図式が成立しているからこそ、メッチャは日々の営業に専念することができ、効率性の高い運営を実現する結果となったのです。運営に専念すればよい運営会社は、とにかく効率の良いオペレーションだけを心掛けていれば良く、そのために徹底的なアウトソーシング化を図ることもできます。主要な運営方針はコンサルティング会社と相談し、販売促進に関しては広告代理店を活用する。レストランやコース管理はもちろん、ハウスの営繕や清掃、保守作業も外注に。何せゴルフ場の最高責任者となるゼネラルマネージャーさえも外部委託という、メッチャでは徹底したアウトソーシング化がおこなわれており、こうした積み重ねが収益性を高める結果となっているのです。
不良債権として塩漬けになっていた新設コース、預託金の償還問題や売上げの減少から経営が破綻した既存コース。資産会社と運営会社の分離なくしては、ゴルフ場の再生などあり得ない。そんな21世紀型のゴルフ場経営の指標が、メッチャで実証される結果となったのです。