では、これまでの構造やシステムを最初に、しかも根本的に変えるとは一体どんなことなのだろうか?
労働時間の短縮や週休2日制の導入などによって、ともすればスタッフ数が増えてしまう傾向にある昨今。しかし、運営収支の改善をめざすなら、省力化によって早急に労務コストを削減するのは当然だ。但し、省力化にあたって運営システムを改善しないまま単に人員だけを削減するという手法は、何度もいうようだが大間違いなのである。
たとえば、今やセルフプレーが主流となりキャディが毎日あぶれるからといって、完全にセルフプレーのコースへ移行するというのは安易過ぎといえるだろう。キャディがいることを期待したゴルファーにとって、セルフプレーは文字通り「サービスの低下」に他ならない。
費用対効果からキャディのニーズが減少したという現実は、確かにキャディ自身に大いなる問題があるのも事実。しかし、ゴルフ場にとって問題なのはキャディそのものの存在ではなく、ラウンド給が100%になっていない、つまりあぶれても給与を支払わなくてはならないという歪んだ雇用契約の中身にあるのだ。したがって、ゴルフ場は省力化という名の下にキャディ付きのプレースタイルを簡単に廃止するのではなく、まずはラウンド給を主体とした給与体系に改めるということが先決なのである。
給与体系の改訂はキャディからのクレームが予想される。当然ながら、それを理由に辞めるキャディもいるだろう。しかし、ラウンド給を100%にしたことによってモチベーションの高いキャディだけが残り、支払われる給与が高まったゴルフ場もある。このケースなどまさに、サービスの低下を招かない省力化の成功例といえるだろう。
最初にセクショナリズムを撤廃し、ひとり何役もこなすマルチジョブを徹底させる。こうしたシステムを予め築いておけば、スタッフの数そのものが減ってもお客さまに迷惑が掛からないサービスが可能となる。また、セルフプレーを導入するとしてもサイン類を徹底したり、詳細なコースガイドを用意してサービスの低下を防ぐことは、ゴルフ場がおこなわなければならない最低限の義務だ。
最新型のカートナビゲーションシステムを導入すればコースの案内はもちろん、運行管理もできるので安全対策やスロープレー対策も万全になる。同じように自動チェックイン機や自動チェックアウト機を導入すれば、フロント業務は大幅に軽減され、サービスは低下するどころか逆に向上するはずなのだ。
雇用問題が絡む省力化は、一歩間違えると大きな誤解を招き、後々まで影響が残ってしまう危険性も秘めている。実はその為にはまずゴルフ場サイドが、「こうした方針で省力化を推進する!」といった意志表示をスタッフ全員に、そしてメンバーコースであればメンバーにも公表し、理解を深めてもらうことが重要なのである。
もっとも、そうするためにはゴルフ場サイドの情報公開は最低条件。ゴルフ場が置かれている厳しい現状を隠さず知らせることによって、はじめて周囲の理解も得られるはず。知られては困るようなことがあるうちは、また、それを上手く隠そうと思っているうちは、ゴルフ場サイドが考える都合の良い省力化など夢物語でしかないだろう。
「地元との雇用問題もあって、簡単にはリストラできない」「現状のサービスを考えると、これ以上人員を削減できない」。
既に省力化を推進しているコースにとって、「雇用調整は非常にシビアな問題」と頭を痛めているはずだ。しかし、本当に必要な省力化が、実はまったくおこなわれていないゴルフ場を多く見かける。
省力化がイコール人員を削減するということで、その対象はすぐに現場に向けられる。しかし、まず真っ先にしなければならない省力化は、もっと身近にある場合が多い。
省力化の多くは上から下、つまり末端のスタッフに向かっておこなわれる。しかし、最も効果の高い省力化は、上に向かっておこなわれるものなのだ。
例えば、顧問や役員、理事といった存在。一方で「省力化!」を声高にうたっていながら、片方では給与や謝礼のタレ流し。こうした存在の方々はコースに来ても何かとお金の掛かることが多く、ゴルフ場にとっては頭痛の種になっている。
また、東京本社や東京営業所といった存在も見逃せない。語弊があるかも知れないが、たかだか1コースや2コースしか持たない事業会社に、こうした事務所が本当に必要なのか? しかも、その大半が東京の中でも超一等地と呼ばれる場所にあるケースが多い。パック旅行によるゴルファー集客が大切な地方のゴルフ場や、ゴルフ場が多角経営をしている企業の一部門であるならまだしも、スタートの受付や会員の管理業務だけをおこなっているような事務所なら、今すぐ閉鎖して省力化に貢献させるべきだろう。
省力化とは、日々のゴルフ場の運営に直接的に関わる人員を削減することだけではない。現場だけを省力化し、その裏でまったく手を付けない領域があるようではスタッフも黙っていないはず。省力化を貫徹させるためには、上に向かった省力化は必要不可欠なのである。
ゴルフ場で省力化を進めるために必要不可欠なもの、そして省力化により「勝ち組コース」の仲間入りをするための鍵を握っているものは何か? それは既にほとんどのゴルフ場に導入されている、ゴルフ場向けの運営コンピューター、いわゆる基幹システムにある。但し、それは何年も前に開発されたような既存のシステムではなく、これからのオペレーションを視野に入れて改良された、最先端を行く基幹システムのことである。
今や、インターネットを活用した予約業務は当たり前。しかし、最先端のシステムはお客様の名前や予約時間、プレースタイルや対象料金といった予約情報が、そのまま自動的にゴルフ場の基幹システムに反映される。ゴルフダイジェスト・オンラインや楽天GORAといった予約サイトから入るお客様の予約情報だって、自動的に基幹システムに反映されてこそ、本当の意味で省力化と呼べるのだ。
また、予約をした時点でプレー料金をいただければゴルフ場は精算業務から開放され、また、キャンセルの強力な防止策にもなるのだが、最新の基幹システムではこうした事前決済も可能となる。
一方、省力化の強い味方となるはずの自動精算機やカートに搭載するナビゲーションシステムも、実はそれだけを単体で稼働させても意味がない。
精算する利用金額に応じてポイントを付加したり、その際にゴルフ場からのメッセージを掲示するといったアイデアを取り入れた自動精算機は、その売上げ金額が経理ソフトと自動的に連動可能に。また、スコアの入力機能が付き、個人のスコアはもちろんコンペの集計までもおこなってしまうナビゲーションシステムは、カートからレストランメニューをオーダーしたり、次回のプレー予約まで可能に。実はこうした技術の要となるのが、最新の基幹システムというわけである。
最先端の基幹システムを活用しゴルフ場の運営に関わるあらゆる要素を一元管理することで、はじめてそれまでの構造やシステムを根本的に変えることが可能となり、スタッフの作業は大幅に軽減されるだろう。雑務から解放されたスタッフは、新たなサービスという商品力を「差別化」にしてお客様を呼び、更に基幹システムを活用してお客様を「囲い込み」する。それは「省力化スパイラル」とはまったく逆の、「勝利の方程式」といえるのだ。