アウトソーシングでゴルフ場はこう変わる!part2

こんな部門はアウトソーシングで蘇る

  アウトソーシングを検討する。そのために、まずしなければならないことは、現状の部門別収支の分析だ。
  例えば、レストラン部門を例にとると、材料費はレストラン原価に、スタッフの給与などは労務費に計上。この程度は何処でもまとめているだろうが、レストラン部門だけの水道光熱費や清掃代の抽出、割り箸などといった消耗品から始まり、サービスで出した食事をどのように計上するのか、レストランスタッフの募集をしたチラシの費用はどこで計上するのかといった具合に、事細かに分析しなければならない数字は膨大だ。
  同じようにコース管理を見た場合、スタッフの人件費やコース管理資材の分類は簡単であるが、燃料代や修理費用など金額こそ少ないものの、分析しなければならない数字は実に多い。特に、燃料代ひとつをとっても、それが車両用の燃料費なのか、焼却用の燃料なのか、それとも管理棟の光熱用なのか…。
  正しい数字が把握できてこそ、その部門の本来の収支が見えてくる。しかし、そのような数字を分析していない部門、いや分析する能力のないマネージャーがトップにいるような部門は、アウトソース候補といわざるを得ない。
  では、部門別収支を完璧におこなっている場合はどうか? 特に、レストラン部門など、既にそれなりの利益を上げている場合、アウトソーシングは本当に必要なのだろうか?
  コース管理や施設管理などと違って、収入があるレストランは利益を出したい部門である。実は、こうした部門こそ、これからはアウトソースし、確実に収益を確保するのが得策なのである。
  そもそも、料理にはトレンドがある。たとえばサラダの盛りつけが、いつまでもキャベツの千切りにキュウリ、これにマヨネーズでは先行き不安だ。しかし、ゴルフ場ならではの閉鎖性故に、まったく進化することを怠った料理長のいるレストランでは、このようなメニューが当然のようにテーブルに並んでいるのも事実。
  コース管理部門でも同じで、芝の品種がどんどん進化しているように、効率の良い肥料や農薬の種類も時代と共に大きく変化。そして、その情報をいち早くキャッチし、安価に購入できるのは地方のゴルフ場ではなく全国展開しているアウトソーシング企業なのである。
  「現状でも儲かっているのに、わざわざアウトソーシングするなんて」。そんな意見をよく聞くが、目先の利益にこだわるのは危険だ。もちろん、その利益体質がいつまでも続く保証はない。
  儲かっているからこそ、アウトソースする際に強気の交渉ができるのであって、儲かっていないレストランであれば、足下を見られて当然であろう。好条件で交渉できるタイミングを見失ってはいないか? 最近では、あまりに収益性が低いために、すべてのアウトソースの候補先から断られてしまったゴルフ場をいくつも見ている。
  アウトソーシングするにあって、どの部門をどの程度外注するのか? また、その外注費用が高いのか? それとも安いのか? その判断基準がわからないゴルフ場も多い。特に、他にグループコースを持たない単独経営のゴルフ場ではその条件を比較することすらできないだろう。また、前述したように部門別の正確な数字を把握できていないゴルフ場もアウトソースする判断基準に困るのではないか。正確な部門別収支が把握できているからこそ、アウトソースによるメリット、デメリットが判断できる。それが大前提となるのである。
  こうしたゴルフ場では、まずは部門別収支の把握をおこない、アウトソーシングの有効性を吟味し、実際にそのアウトソース先を差配してくれるようなゴルフ場専門のコンサルティング会社に相談すると良いだろう。つまり、経営分析をアウトソースすべきなのである。

アウトソーシングが既存スタッフの雇用を確保

  アウトソーシングは時代の流れ。これは疑いようのない事実だ。しかし、どのようにして取り入れていけば良いのかがわからないゴルフ場が多いことも事実である。
  一方、既にさまざまな経験を積み、もちろんそれなりの努力もしているゴルフ場。当然ながら、今後やらなくてはならないことも十分にわかっているのだが、実際は様々なしがらみがあって、思うようにはできない。そんなゴルフ場にとっても、アウトソースは様々なメリットを生むだろう。
  ゴルフ場の収益の改善は、営業努力による入場者の増加と、労務コストがその大半を占める固定費の削減にかかっていると言っても過言ではない。しかも、前述したように、その労務コストは有効に使われていないのが現状だ。
  したがって、既存のスタッフだけで収益を改善しようとしても、所詮限界があって当然。そこで昨今注目されているのが、ゴルフ場専門のオペレーションスタッフに、レストランやコース管理はもちろん、フロント業務や事務作業など運営のすべてを任せるアウトソース。そう、究極のアウトソーシングといえるのが、ゴルフ場の運営委託なのである。
  運営をアウトソースした場合、受託会社は日々のオペレーションはもちろんのこと、その独自のノウハウにより事業性を高め、効率よく収益を改善する。
  ゴルフ場事業の収益性が低いといわれている最大の理由は、経営会社(ゴルフ場の資産保有会社)と運営会社(オペレーション会社)が同一であるケースが多く、経営者の思い入れで特別なノウハウがないままに開場してしまうことや、旧来のしがらみなどによってスムースなオペレーションができないことが原因となることが多いからである。しかし、経営と運営を分離することで、こうしたリスクの大半は回避することができるはず。最近話題の外資系企業を見てもわかるように、資産会社と運営会社の分離は、高収益体質のキーワードをいえるのである。
  アウトソーシングで常に問題となるのが、既存スタッフの処遇だ。しかし、給与水準が維持されるかどうかはさておき、取り敢えずはアウトソースした会社に転籍するケースが一般的といえるだろう。アウトソースを受けた会社も当然スタッフの頭数をそろえなければいけないわけで、既存のスタッフは貴重な戦力になるのである。
  中には転籍を拒まれるケースも少なくない。その理由は、給与がいたずらに高かったり、職能レベルが著しく低かったり…。しかし、そもそもそうしたスタッフを雇用していたこと自体に問題があったわけで、ゴルフ場は深く反省すべきであれ、アウトソース先を攻めるような話しではない。
  アウトソース先への転籍は、既存スタッフの抵抗に合うかもしれない。しかし、必ずしも不幸な出来事ではないことを、ゴルフ場はもっと声を大にしなければならない。いや、やる気のあるスタッフにとっては、むしろ大きなチャンスであることを説明すべきなのである。
  地方にある閉鎖的なゴルフ場のスタッフから全国展開を図るアウトソース企業のスタッフに。それは、大きな目標と新たな生き甲斐を生むことに繋がるのである。実際、アウトソース先でスキルアップをし、日本国中を元気に飛び回っているスタッフも何人もみている。
  経営を合理化し、高収益体質へ変革する扉の鍵を握るアウトソーシング。その一方で、「ゴルフ場の運営はお金だけではない!」という声があるのも事実だ。しかし、確実に収益を上げて健全に経営が成り立ってこそ、スタッフが安心して働けるフィールドを提供できるのである。既存のスタッフを思いやるばかりに、ゴルフ場の経営自体が破綻してしまう。そんな過ちだけは、絶対に避けなければならないのである。




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