シンプルな価格設定で合理的に集客する。強気とも思われるこの営業施策を可能としたのが、インターネットであることは疑いようのない事実である。
ほんの2?3年前まで、北海道のゴルフ場はインターネットのからの集客数が極端に低い状況にあった。その理由は実に簡単だ。北海道のゴルフ場の大半は内地、つまり道外からやって来るツーリストゴルファーには驚くほど高い料金を設定し、地元のゴルファーには極端に安い料金を設定するのが一般的だった。このため、道外のゴルファーも目にする可能性のあるホームページや集客サイトなどに、安い料金は「出したくても出せない」というジレンマがあったのである。
ところが、状況は一変する。道外からのゴルファーが激減し、総来場者に占める割合が極端に減少。多くのゴルフ場が、地元ゴルファーの集客を第一と考えるようになった。こうなると、道外ゴルファーを意識した高めの料金設定はまったく無意味な存在だ。ホームページに提示するプレー料金は、あくまでも地元ゴルファーを意識した、まさに実勢価格でなければ見向きもされないというわけである。実際、この営業方針をいち早く採り入れたあるゴルフ場では、厳しい札幌周辺のゴルフ場市場にあって、昨年は前年比3割アップ、しかも客単価もアップするという飛躍的な数字を残す結果となった。
ゴルファーのライフスタイルを調査したある統計によると、アマチュアゴルファーの90%以上が男女を問わずに、ほぼ毎日インターネットを利用しているという。これは、日常の仕事や使用までを含んでいるものであるが、それだけインターネットの存在が我々の生活に欠かせないものとなってきていることを裏付ける数字といえる。
また、同じ調査ではその内の90%以上のゴルファーがインターネットを使ってゴルフ場情報を入手しているという数字となり、ほとんどのゴルファーがインターネットからの情報を参考にしていることが判明した。これらの調査結果を見ると、ゴルフ場としては今以上にインターネットを介した情報提供や予約機能の充実に力を入れなくてはならい現状にあることがわかる。
もっとも、インターネットといっても単に「ホームページを開設すれば良い」といった単純なものではない。Web予約と基幹システムとの連動により「枠出し」「予約埋め」を効率化して集客機会損失を防ぐと同時に、合理的に予約に結びつけなければ、それを省力化や合理化とは呼べないのである。
単なる情報発信の道具に過ぎなかったホームページであるが、今では「どれだけ利用者の利便性を考えた構成になっているか?」が大きな差別化となり、重要度を増している。しかしそれは結果として、「合理的に集客をしやすい環境を整える」ということにも繋がっている。
インターネットを介した予約方法には、取り敢えずゴルファーの希望の時間を聞き、後でその結果を知らせる俗にいう「リクエスト予約」と、予め予約可能なスタート時間を掲出し、ゴルファーに直接その枠を選んでもらうといういわゆる「リアルタイム予約」に大別される。ゴルファーから見ると、直接スタート時間を選択することができ、何よりその場で予約が完了する「リアルタイム予約」が当然ながら便利なので、成約する確率も圧倒的に高くなる。つまり、まずはこの「リクエスト予約」に対応できる予約システムが省力化には必要不可欠ということである。
但し、ゴルフ場の予約担当者は常に予約可能なスタート枠の掲出に神経を使い、集客サイトから送られてくる予約情報をゴルフ場の基幹システムに打ち込むといった作業が必要になる。多いゴルフ場では年間10,000人以上もの予約がホームページ経由で入るので、その事務処理だけでもかなりの仕事量になってしまうのだが、最新の基幹システムではホームページの予約画面と直接つなぎ込むことにより、その手間を大幅に削減してくれる。こうした予約システムを構築することにより、さらなる省力化、そして合理的な集客が可能となるのである。
ゴルファーの心は移り気だ。特にGDOや楽天GORAといった集客サイト(ネットエージェント)を利用しているゴルファーは、「少しでも安いところ」「お得なプランがあるところ」「何かしらの特典が付いているところ」をキーワードに、ゴルフ場を選択するケースが多い。こうした「浮遊票」ともいえるゴルファーは、1度限りで良いのであれば予約に結びつけることは容易である。しかし、難しいのはこうした浮遊するゴルファーを特定のゴルフ場のファンとして取り込んで、リピーターとして囲い込むことにある。取りあえず呼び込むことは簡単であっても、実際にゴルフ場へ来た時にがっかりするようなことがあれば、二度とそのゴルフ場へ来ない。そればかりか、プレーヤーのコメントとして「悪口」を書き込まれてしまうというリスクを抱えているのもまた事実である。
集客サイトはひと組でも多くの予約が欲しいゴルフ場にとっては非常に便利なシステムであるが、その一方で集客サイトに頼りすぎてゴルフ場の独自性をスポイルする要因になっているケースも少なくない。また、集客サイトは当然ながら送客手数料が必要となることから、収益性を悪化させる要因にも繋がる。そこでこれからのゴルフ場は集客サイトに頼ることなく、ゴルフ場自身の自社ホームページから直接予約を取り込むことが省力化、そして合理化という点から求められるようになる。
ゴルフ場独自の予約システムの最大のメリットは、「電話予約の手間が省ける」「24時間受付可能」といった他に、「顧客データが自動的にゴルフ場に蓄積される」ことにある。ところが、集客サイトを経由した予約はゴルファーの名前や連絡先の電話番号こそ教えてくれるものの、インターネット時代の「お宝」ともいえるメールアドレスや詳細な個人データは開示しないのが普通だ。メールアドレスが蓄積されれば、メールマガジンを使った集客など営業施策の幅が一気に広がるはずなのだが、現状はそれができずにいるゴルフ場も少なくない。
では、どのようにして集客サイト経由の予約を自社のホームページからの予約に取り込めるようになるのか? その最良の手法が、自社のホームページに出している料金が、どの集客サイトよりも安いという「最低価格保証」(ベストギャランティシステム)制度。欧米の有名ホテルではもはや常識ともいえるこの「最低価格保証」が周知徹底されれば、ゴルファーは自ずと自社のホームページを経由して予約を取るようになるという、実に合理的なシステムである。
ただし、いきなり自社のホームページ経由の予約を増やそうとし、集客サイトへの予約枠を絞ったりすると、インターネット経由の予約の総数全体が減少してしまうという、本末転倒の事態になりかねない。集客サイトはゴルフ場の存在を広く知ってもらうというパブリシティ効果もあることから、まずは集客サイトによって認知度を高め、それと同時にインターネット予約のインフラを整備する。自社のホームページへ誘導するのは、それからでも決して遅くはないのである。
いずれにしろ、インターネットを介した予約を増やすには「いかにして自社ホームページを見てもらうのか?」。それがポイントになることは間違いない。最近はゴルフ場で働くスタッフの目線で最新の情報を発信する「ゴルフ場のスタッフブログ」によって閲覧回数を飛躍的に延ばしているコースがある。新しく入ったスタッフの話題、コースの片隅に咲いた花で知る季節の変化、普段は脚光を浴びにくいハウスメンテやコース管理の話題など。ホームページでは表現できない細かなことも、ブログなら写真の更新も簡単で、すぐに発信することが可能となる。しかも、コストの負担も少ない。
どのようにして手間を省き、如何にして合理的に集客するのか? ゴルフ場の省力化、そして合理化は、実はまだまだ始まったばかりなのである。